その朝は運命であった。何気なしに朝、見た事もないチャンネルのテレビを見ていたら「元祖 有名駅弁 全国うまいもの大会」を取材していた。インタビュアーがその会場に乱入して様々な駅弁を取材して食いまくりウラヤマシさの連続だった。美味そうだ~~~実に美味そう!!。確かに美味そうな弁当のオンパレード、駅弁の甲子園、駅弁のワールドカップ、駅弁の秋葉原、駅弁の総合商社、・・その美味さをなんと比喩しようか。だって、いっぺんに日本中の駅弁を一堂に集めるなんて日本のデパートはやる事がスゴイ。そして、その迫力に興味をもった。・・・・・・・・その後、信じられない事に・・・波田はそのテレビ番組からニ時間後になんとその会場にて実演の”瀬戸の牡蠣ずくし弁当”の屋台の前に立っていた。これは、X―ファイルでも心霊現象でもない。ただ単に偶然、新宿に用事があって出向いたのである。(結構、ヒマジンと言われても仕方が無い。)そう、あくまでツイデです。ツイデ。ツイデ、ツイデ、と口ずさみながら波田はさっさと用事をすませて京王デパート7階の催事場にやってきた。
早々、マジで何かに突進するオバチャンにモミクチャにされながら会場方面に向うが、人出の多さには唖然とした。こんなにいっぺんにオバチャンを見た事が無いというほどに物凄いオバチャンの数だ。 坪当たり9~10人のオバチャン指数。さて、この駅弁大会は大変由緒あるものらしく、チラシには「第38回」を誇らしげに印刷してある。おそらく38年前には情緒ある列車の旅が楽しめたのだろうが、最近の移動は当然に新幹線か飛行機。東京から大阪まで3時間弱、時々、札幌から一気に沖縄に飛ぶ事があるがそれでも約3時間。まったく昔の移動とは別次元になってしまった。窓を開けてホームの売り子から買う、あるいは、わずかな停車時間の間にホームに降り立ち、駅弁コーナーからもぎ取るようにして買う駅弁は過去のものとなった。大体、今の列車の窓なんて開かない!。昔懐かしさを求め、そして旅の憩いを求め、老若男女が新宿京王百貨店7階大催場に哀愁を求めて集結しているのだ。パンフレットの表紙には、K-1さながらの対決が待っていた。 「対決 貝三昧」”たいけつかいざんまい”(どうしてか弱い貝同士を戦わせなくてはイケナイの??) 帆立貝vs.北寄貝(ほっきがい)vs.牡蠣 帆立の出身は北海道旧渚滑線・渚滑駅、代表は帆立めし840円、実演。 北寄貝の出身は北海道室蘭本線・洞爺駅、代表は洞爺のホッキめし1,050円、実演。 牡蠣の出身は広島県山陽本線・広島駅、代表は瀬戸の牡蠣めし1,000円、実演。 実演というところに本気ぶりが滲み出ている。一つ明らかなのは、いずれも甲乙つけ難い実力弁当であるということだ。3者「整理券」配布の対象となっていることから、その実力の程が伺える。一日の予定数量は、帆立と北寄が500食、牡蠣が700食。まさに冬ならではの貝三昧対決。
しかし伝統的な駅弁の長蛇の列には、思わず目を惹かれた。横川の峠の釜飯(信越本線 横川駅 900円)。これは陶器の小さな釜ごと売っている弁当だが、駅弁大会の最強の人気度を誇っている。いかめし(函館本線 森駅 470円)。醤油で味付けした「いか」の胴体に飯を詰め込んだ単純なものだが、順番を待つ列は非常階段の背後を回り、三重県伊勢市名物”赤福”領土にまで迫る。列の長さとしては会場随一と言えよう。会場内には「休憩所」なる空間も設けられ、「汽車」の座席風のベンチにて駅弁を楽しむことのできるようになっている。御丁寧に汽車の音も流されていて昔の汽車旅の擬似体験も可能だ。だが、2人掛けの席には四人家族が占拠。その背後には、老若男女のうち「老」「女」の2条件を満たしている人類が、これまた、けたたましい音声を発しながら駅弁を食している。パンフレットの「特別企画」には、「台湾の駅弁」も紹介されており、揚げて煮込んだ味付け豚肉と干し海老入り炊き込み御飯の贅沢な味が、刻印入りのステンレス容器に入って1,450円で売られている。
しかし恐るべしデパートの企画力。新旧様々な弁当という小さな四角い世界に土地の風情を詰めこんだ、素晴らしき世界を見た。 この駅弁大会は2003年1月9日から22日まで行われている。定期開催的なイベントなので行かれないヒトは次回を要チェックしましょ。