干物は美味い。本当に美味い干物は刺身以上かもしれない。魚は新鮮なうちに天日で干すとビタミンDがズンズンと出て旨味がますのだ。乾燥した干物は当然に保存食である。もしオレが干物ならばこの店で売られたいし、ここのお客さんにご賞味願いたい。おそらくグッチかプラダ、いやエルメスあたり、いやいや京都の老舗旅館の俵屋かぁ・・・・そんな一流ブランド店が副業で”干物業界”に乱入となったら、きっとこんな店になるのであろう。
とにかく店の店舗がカッコよすぎる。一切の手抜きが無い建物だ。窓類(建具職人が作った木製のドア)、壁(左官職人の見事な漆喰塗りの壁)、床材(新建材などではない無垢の木)、手すり、取っ手などの金物類(デザインも美しい、手触りが良い!)、外壁、屋根(銅板がふいてある。)・・・・・崇高な建築家、ミースファンデルローエは”神々は細部に宿る”と言っているが、まさに細部に神々が宿りまくっているのだ。おそらく、そんな店は出す食べ物にも当然にコダワリがあるに違いない。
ガラスショーケースに入る干物類は美しすぎる。個人的意見を言うならば刺身のアジと干物のアジ・・・・どちらが美しい”製品”かと言えば刺身であろう。あの内臓内側をさらけだして乾燥して乾く姿とミズミズしい刺身を較べれば、やはり軍パイは刺身に挙がるであろう。しかし、この店にディスプレイ(あえて陳列とかいう言葉は使いたくない。)大皿に横たわる姿は艶かしいではないか。鯵のサイド・ラインを見てみよう。飛び魚の尻尾の切れ具合を見てみよう。ホッケのふくよかな胸まわりを、メザシのストイックに脂肪分が抜けた姿を、金目なんて”いぶし銀”な世界。
良く考えてみると、ここ近年、冷凍技術は激しく進化していると聞く。要は、その魚の最高に油がのった美味しい時期に大量に仕入れて、干物にして(当然に天日だ。世の中の流通する殆んどは天日ではなく機械で乾燥させている。)そして急速冷凍して保存。一年を通して安定した美味しい干物が食べられるのだ。冷凍品=不味い という図式は間違っている。”旬”でない生のものより”旬”の時期に作られた干物が断然に美味しいのだ。そしてこの店の定食は二種類用意されている。オニギリ定食(オニギリが二つと味噌汁、漬物、小鉢)850円、定食(味噌汁、漬物、小鉢 他)700円。以上の二つのコースで干物を好きにチョイスして焼いてもらっていただくのだ。
その平凡かつ質素な品々が焼きたての干物と織り成すハーモニーは”崇高”な味の域に入っている。これぞ”ニッポンジンの魂にうったえる味”と言っても過言ではないであろう。
- 干物 和助 静岡県沼津市下河原51-2 電話 055-962-0756
- 営業時間 9:00~18:00 定休日 木曜日
- 沼津インターから沼津駅を抜けてサンサン通りを港方面に向かい右側。
- 静岡県沼津市下河原町51-2 和助
- 地図 Mapion Google http://www.at-s.com/bin/guru/guru0040.asp?yid=B198429970 ]