トンカツはトンカツにしてトンカツにはあらず。トンカツは美味いだけではいけないのだと知った。”地球環境保護と飢餓救済のために””トンカツ屋、テンプラ屋における公害と犯罪”なる小冊子を配る店がある。そして世の中にあるトンカツ屋は全てが罪悪である、存在が許されないという過激発言を聞いた。
さて、その店は一般のトンカツ屋とは明らかに雰囲気が異なる。一般のトンカツ屋にある活気はまるで無い。店員は店主一人。いつでも一人・・・お店に入るとシィ~~~~~ンとしている。トンカツを注文してもジュワァ~~とかキャベツの千切りを作るトントントンなんて音も無い。カウンターを見回しても美味しいトンカツ屋にあるソースの壺も見当たらないし、その代わりにブルドック・トンカツソースなんかが置いてある。店主に言わせればソースが美味しいなんて肉が美味しくないからソースにコダワルのだとの解説・・・・ナァルほどと納得したようなしないような。とにかく注文してみる。店内を見回すとコアガリ(畳のスペース)には読みかけの哲学書(ニーチェやサルトル・・・)が置いてある。いったいナンなんだぁ!? そして十数分後に出てきたトンカツを見て驚いた。見た目には円筒形の卵焼き・・豚の卵揚げ・・・おおよそトンカツとは思えない作品だ。
そして市販品のブルドックソースをかけてみて食う。他店のコロモのサクッとかいう感じは全く無い。しかし、これは確かにコロモである。パン粉のサックリ感が無いのだナァ。(でもまた聞いたら”君たちはコロモを食いに来たのかぁ!?”とか言われそうだ。)確かに肉の味は違う。美味しいぞ。明らかに違うのは明確だ。付け合せのキャベツも全然トンカツ屋らしいフワッとした細切りキャベツではなくて、ひょっとして俺でも切れるかナァというザックリ感だ。しかし店主に言わせればきっとキャベツが細いだぁ、フワッだなんてトンカツが不味いから誤魔化しなのだと一喝されるような気がしたので無言。結局、美味いの、不味いのは賛否両論だと思うがオレは好きだ。俺は好きだよ。それは名店”とんき”とは違うモノとして双方相容れない食物と考えよう。これは別次元の美味さだと思った。あなたも人生に迷い何か指針を見出したい時にニーチェやサルトルのエネルギーや知恵がこもったトンカツでも食してじっくりと哲学してみようじゃないですか。
《以下、この店の小冊子からの引用です。》 地球環境保護と飢餓救済のために。(とんかつ屋、天ぷら屋における公害と犯罪)より抜粋。 《注目すべきは水分、脂質、エネルギーであります。当店製は水分でほぼ倍近く脂質、エネルギーでほぼ半分です。生肉と比較すれば当店製がいかに素材の要素を損なっていないかおわかりでしょう。もちろん他店で”とんかつ”と称しているものが異常なものなのです。なお本表は当店が他店と全く異なった次元の存在であることを証明するためのものです。他店のトンカツは一人前250グラム程あり一食分としては決して低カロリーでも低脂肪でもありません。べつに当店がダイエットに良いとは申しませんが。また当店、他店の脂質から生肉の脂質を引きますと揚げ油をどれだけ吸収しているかがわかります。他店では素材成分を大きく損なうため実際30%以上になりましょう。当店は計算上5%程度ですがその後は更に技術革新が進み2%台になっています。》・・・・・・最後の締めくくりが凄い。《当店の最大の悩みはライバルがいないという事です。・・・・・》とにかくこの小冊子、一度読んだらブッたまげますよ! ここの店主は・・・天才、宇宙人、とにかく異次元の人なのだ。
水分
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脂質
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エネルギー
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当店
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55.0
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18.6
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269/100g
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他店
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34.0
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35.8
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440/100g
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- とんかつ ”平兵衛” 東京都台東区上野6-7-13 03-3831-3873
- 上野駅の駅前の丸井の数本、裏側の路地。駅から3分。