男の金沢 赤城 "山菜は人を変える!!"

男の金沢 赤城 “山菜は人を変える!!”

金沢の新天地商店街は、昔でいうところの歓楽街で、50店以上の店がバラック的な建物でひしめき合うエリア。金沢というより新宿ドブ板通りか渋谷の飲んべえ横丁を思わせる庶民的なエリア!!(金沢は全てが城下町みたいなのを勝手にイメージしていた!) しかしこれも現実の庶民の金沢なのだ。金沢の人間が日夜、懐石料理を食べているとも思えない。普通の人々やサラリーマンはこんな店に出入りしているのであろう。店の名前は”赤城”だ。店に入るとカウンターだけの10席の店。雰囲気は良いが、雰囲気は悪い。何を言ってるのかわからないがビミョウだ。店主は優しそうでおっかない。でも話すと優しそう・・・注文した”焼酎のお湯割り”と言った瞬間に魔法瓶をドンと目の前に置かれコップを渡された。そして『わかってますよね・・お好きに!』と顔は恐いが目が優しい。ということで目の前の壷の蛇口から焼酎を注ぎ、自分の好きな濃度の焼酎を作る”自己申告制”だ。

男の金沢 赤城 "山菜は人を変える!!"

一人で乾杯をして店内の様子を観察。左側のスキンヘッドの兄ちゃんは、顔にキズがありサングラス(この場合、グラサンと呼ぼう)を頭にひっかけている。ファッションは独特だ。どこで買ったんだろうか、そのジャージ。実に独特・・・ファッション誌などは眼中に無い勢いを感じる。年齢は若いがそれなりの修羅場は何度もくぐり抜けた余裕を感じる。ただ今夜は少々飲み過ぎているようだ。 怖いところに来たなぁ・・・と感じていると、後から右側の席に新しい客が入ってきた。身長162センチの小男、推定年齢62歳。この男、出来る!!と感じた。座るや否や店主がニコリともせず、よほどの常連なのだろう。決まった焼酎のロックを出して、突き出しとは違う小料理を一品出す。 出された瞬間、小男は目で感謝の合図をして一気に飲みきり、空のグラスをゴンと置いた瞬間に次の一杯がだされた。そして小男はガツガツっと魚の煮物を食い一言”美味い!”そして店主が瞬間に微笑む。そのアッという間の二人の”ご挨拶的コミュニケーション”は一夜一夕で出来る事ではない。そして左側の”独特ファッション兄さん”を再度、観察してみよう。一人でブツブツ言いながら飲んでいる。完全に怒りながら飲んでいるのだ。殺気さえミナギルその独特ファッション兄さんの会話を聞いて仰天した。要約すると、”今日、山菜採りに山に入ったら、自分のシークレットポイントに誰かに発見されて、いよいよ今日は採るぞと勇んでいたのに自分の採取予定の山菜を、誰かフトドキモノに採取しまくられた!せっかく楽しみにしていたコゴミやゼンマイを何者かに持っていかれた。クッソー!!この怒りをどこにぶつけていいやら・・・・” この兄ちゃんは山菜採りをこよなく愛しているらしい。(だいたい、その山はアンタのかい!?と思いはしたが発言は控えた。)そして、その会話に主人が加わる。やはり強面の店主も、山菜採りに生きている。そして右側の小男もかったるそうに、新しい山菜採りのシークレットポイントを二人に話し始め、会話はどんどん盛り上がってきた。山菜知識ゼロ(いや1)の波田は三人に取り囲まれた状態で困った。”ヒドい話だろ!”と声かけられたって答えられない。

男の金沢 赤城 "山菜は人を変える!!"

・・・・・さて料理の注文だが、値段が書いていなかったので怖々注文してみた”クレソンサラダ”のシャキシャキ感は過去に類を見ないモノであった。ヤルキが違う!! ”山菜の天ぷら”なんて東京ではまずお目にかかれない貴重なモノ。聞けば、全て店主が今日の朝に山奥で採取してきたという。一見恐ろしそうな人々は山菜をこよなく愛する人々だった。そんな店主の赤木久士さんが毎日釣り上げた川魚や山菜、キノコを旬も旬!朝採りの超新鮮素材を使って出す料理は全て美味いに決まっている。 おそらく都会ではまず食べられない、苦さや甘さ、そんなミラクルな素材そのものの味の世界がここにはあるのだ。 帰りがけの主人と二人の強面男が”またなっ!”と声をかけてくれて思わず山菜マニアになる決断をしてしまった。

  • 山菜季節料理 赤城 石川県金沢市片町2-3-27(新天地商店街)
  • 076-263-7897 営業時間 17:00?24:00